あれは残業で疲れ果てて帰宅した、深夜1時過ぎのことでした。やっとの思いで家にたどり着き、スーツのままソファに倒れ込みました。汗ばんだ体を早く洗い流したい一心で、重い体を起こしてお風呂場へ向かい、シャワーの栓をひねったのです。しかし、いつもなら勢いよく聞こえるはずの流水音は全くせず、代わりに静寂だけが私を包みました。一瞬、何が起こったのか理解できませんでした。何度か栓をひねり直しましたが、結果は同じ。水が一滴も出てこないのです。キッチンも洗面所も試しましたが、状況は変わりませんでした。その瞬間、私の頭の中は一気にパニック状態に陥りました。「どうしよう、故障?この時間にどこに連絡すればいいんだ?」と、心臓がバクバクと音を立て始めました。とりあえずスマートフォンで「マンション、水が出ない、深夜」と震える指で検索し、対処法を読み漁りました。そこに書かれていたのは、まず自分の部屋の元栓を確認すること、そして建物全体の問題か確認することでした。玄関脇のメーターボックスを開けましたが、元栓はしっかりと開いています。これは自分だけの問題ではなさそうだと感じ、次に思い出したのがエントランスの掲示板です。普段は素通りしているその場所へ、部屋着のまま急ぎました。すると、そこには一枚の貼り紙が。「本日深夜1時より、貯水槽清掃のため断水いたします」。その文字を見た瞬間、全身の力が抜けました。そういえば数日前にポストに案内が入っていたような気もします。忙しさにかまけて、全く確認していませんでした。原因が分かった安堵感と、自分の確認不足に対する情けなさで、その場にしばらく立ち尽くしてしまいました。この苦い経験から、私はマンションからの案内には必ず目を通すこと、そして念のためにペットボトルの水を数本ストックしておくことを心に誓いました。深夜の断水は、本当に心臓に悪いです。