あれは、週末の買い出しから帰ってきた時のことでした。たくさんの荷物を抱え、キッチンの床に置こうとした瞬間、「ザクッ」という奇妙な感触と共に、足元に冷たいものが広がりました。驚いて見下ろすと、キッチンの床一面が水浸しになっていたのです。一瞬何が起きたのか理解できず、頭が真っ白になりました。水の源を探してたどり着いたのは、シンク下の収納扉。恐る恐る開けてみると、そこはまるで小さな池のようになっていました。収納していた鍋やボウルが水に浮かび、水は扉の隙間から絶え間なく溢れ出ています。パニックになりながらも、まずは水を止めなければと、シンク下の奥にある止水栓のハンドルを必死に回しました。水が止まったことで少しだけ冷静さを取り戻し、改めて状況を確認すると、引き出し式になっているシャワー水栓の蛇腹ホースの途中から、水が噴き出した跡がありました。どうやら、長年の使用でホースに穴が開いてしまったようです。床に敷いていたクッションフロアは水を吸ってぶよぶよになり、その下の床板まで濡れているのが分かりました。私はすぐにスマートフォンで水道修理業者を探し、事情を説明して来てもらいました。駆けつけてくれた作業員の方によると、シャワーホースの経年劣化が原因で、これはよくあるトラブルなのだそうです。幸い、階下への水漏れは免れましたが、床の張り替えが必要になるかもしれないとのことでした。この経験を通じて、私は目に見えない場所で起こるトラブルの怖さを痛感しました。シンク下なんて、普段は全く気にしていなかった場所です。でも、そこには家の機能を支える重要な配管が通っているのです。この一件以来、私は定期的にシンク下をチェックするようになりました。あの日の恐怖と、床を拭き続けた労力は、二度と味わいたくないですから。